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  • 執筆者の写真神楽

とある夏の日②

更新日:2023年7月27日


どれだけ遊んだのだろう・・・

こんなにはしゃいだのも何年ぶりだろう・・・


私の体を真っ赤に焦がした太陽は、いつの間にか笑いながら水平線に沈んでいく。

目に映るのは、ヒロキの元気いっぱいな笑顔だけに感じる。


似てる・・・かな

智也と・・・


「うわーっ、遊び疲れたー!」


両腕いっぱい広げながら、西日に照らされた優しいオレンジ色の砂浜にヒロキは大の字に倒れ込んだ。


ヒロキの心の中に、私はいるのかな・・・


ドサッ!!


「ホント楽しかったー!」


奈美がヒロキの腕を枕に、いつもと違う可愛い子ぶった声で重なった。

続けざまにヒロキの友達も奈美を挟んで川の字のように転がった。


なんだろう・・・この感じ・・・


もしかして・・・


好き・・・?


奈美がヒロキと白い歯をこぼしながら重なっているのを見て、私の心に羨望のさざ波が立った。


「帰ろうかな・・・」


私は三人に小声で言った。


「えーっ!帰っちゃうの?」


本当はヒロキに止めてもらいたかったのに、冷めた口調で聞こえたのは奈美の声だった。


なぜか智也に重ねてヒロキを見てしまった私・・・

でも、ヒロキが見ているのは奈美・・・


居ても立ってもいられなくて、帰るしかなかった。


「うん、先に帰るね」


私は強がってそう言った。

本当は帰りたくないけど、これが精いっぱいの強がりだった。

見透かされたくなかっただけなのに。


私の後をついて、奈美も一緒に帰ってくれることを期待した。


寂しい気持ちと、ほんの一瞬だけでも恋心が生まれた複雑だけど淡い気持ちが込み上げた。


「ただいま・・・」


奈美を残して1時間くらい経っただろうか、私は誰もいないアパートの玄関を開けた。

その静寂の中で、私のスマホに奈美からのLINE。


「助けて!」


苦しいほどの暑さが残る部屋なのに、私の背筋に冷たい何かが走った。

続けざまにメッセージが届いた。


「44-10 白バン」


私はすぐにヒロキ達の車だと頭に浮かんだ。

帰り際に見たあの白い車だ。


私はビーチサンダルのままアパートを飛び出して、家の前に運よく止まっていたタクシーに乗り込んだ。

不安な気持ちと焦る気持ちが入り交じり、時間の経過がいつもより長く感じた。


「急いでください!」


タクシーの運転手さんにお願いして、奈美のところへ向かった。


キキキーっ!!


そそくさとタクシー代を支払い、まだ駐車場に停まったままの白いバンに向かった全力で走った。


「奈美・・・奈美っ」


真っ黒にスモークが張られた窓ガラスの中を覗き込もうと顔を近づけたその時!

ヒロキが何もなかったかのように、さっきと変わらない笑顔でドアを開けた。


「えっ!」


私は何が起きているのか理解できなかった。


「おかえりなさい」


ヒロキが優しい声で私を迎えてくれている。

状況が掴めない混乱状態の私は、声が出なかった。


驚いて立ちすくんでいる私を、ヒロキは車の中へ強引に引っ張りこんだ。


奈美も、ヒロキの友達も居ない・・・


「奈美ちゃんは、コンビニに買い物に行ったよ。お腹空いたから、サンドイッチを買って来るって」


ヒロキは軽い笑みを浮かべながら言った。


さっきの奈美からのLINE・・・

あれは悪戯なのか・・・


さっきまで不安に駆られて泣きそうなくらい怖かったけど、今は昼間と変わらないヒロキの笑顔が目の前にある。


私の心が浮つきながらも乱れ始めた・・・


ーーーーーつづくーーーーー


次回予告


奈美に起きた衝撃の事実が明らかに!

そして、私の体が蝕まれてしまった。


その最後の結末や如何に!


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